2026.9.16
自治体との随意契約とは?契約につながる条件・金額基準・営業の進め方を解説
「自治体と取引するには、必ず一般競争入札に参加しなければならない」と考えていませんか。
自治体との契約には、一般競争入札や指名競争入札、プロポーザルのほかに、随意契約という方法があります。特に、SaaS、DXツール、研修、コンサルティング、専門的な支援サービス、実証実験などでは、契約金額やサービスの専門性、独自性などを踏まえて随意契約が検討されることがあります。
ただし、自治体へサービスを紹介するだけで随意契約になるわけではありません。自治体の課題、予算、契約方法、庁内決裁まで考え、担当者が組織内で説明しやすい提案を行うことが重要です。
この記事では、自治体との随意契約の基本から、一般競争入札との違い、随意契約が検討されるケース、営業から契約までの進め方を分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 自治体における随意契約の基本
- 一般競争入札・指名競争入札・プロポーザルとの違い
- 随意契約が検討されやすいケース
- 自治体営業から契約までの具体的な進め方
- 自治体担当者に確認したい質問項目
自治体との随意契約とは
随意契約とは、競争入札を行わず、自治体が特定の事業者を選定して契約する方法です。
一般競争入札では、公告された条件を満たす事業者が参加し、原則として価格などの基準によって契約先が決まります。一方、随意契約では、契約金額、業務の性質、専門性、緊急性、既存事業との継続性などを踏まえて、自治体が契約先を選定します。
ただし、随意契約は「自治体が自由に好きな事業者を選べる制度」ではありません。地方自治法、地方自治法施行令、各自治体の契約規則などに基づき、随意契約とする合理的な理由が必要です。
また、随意契約であっても、複数の事業者から見積書を取得する「見積合わせ」が行われる場合があります。随意契約だから競合がいないとは限らない点に注意しましょう。
一般競争入札・指名競争入札・プロポーザルとの違い
| 契約方法 | 主な特徴 | 営業上のポイント |
|---|---|---|
| 一般競争入札 | 条件を満たす事業者が広く参加する | 入札参加資格、仕様書、提出期限への正確な対応が必要 |
| 指名競争入札 | 自治体が複数の事業者を指名する | 事前の認知、事業者登録、過去実績などが重要 |
| 随意契約 | 特定事業者の選定、または見積合わせにより決定する | 選定理由、価格の妥当性、導入の必要性が重要 |
| プロポーザル | 価格だけでなく提案内容や実施体制を評価する | 企画力、実績、実施体制、プレゼン内容が重要 |
自治体営業では、最初から契約方法を一つに決めつけないことが大切です。事業内容、予算額、導入時期、自治体の規則によって適切な契約方法が異なるため、担当部署だけでなく契約担当課への確認も必要になります。
随意契約が検討されやすい主なケース
1.契約金額が自治体の定める基準以下の場合
予定価格が一定額以下の契約では、少額随意契約が可能になる場合があります。ただし、対象となる金額や運用方法は、契約の種類や自治体の規則によって異なります。
営業する企業側が金額だけを見て「随意契約にできる」と判断せず、必ず自治体の契約規則や担当部署の判断を確認しましょう。
2.特定の事業者にしか提供できない場合
独自の技術、特許、専門的なノウハウ、既存システムとの連携などにより、他社では代替できない合理的な理由がある場合です。
単に「自社サービスは優れている」と説明するだけでは不十分です。競合サービスとの違いや、自社でなければ実現できない要件を客観的に整理する必要があります。
3.既存事業との継続性が必要な場合
既存システムの保守、継続的な研修、相談支援、データ連携など、事業者を変更すると業務に支障が出る場合は、継続性が考慮されることがあります。
4.緊急性がある場合
災害対応や緊急的な設備修繕など、競争入札を実施する時間がない場合です。企業側が営業上の都合だけで緊急性を主張できるものではなく、自治体側に客観的な事情が必要です。
5.実証実験や小規模導入から始める場合
新しいSaaS、DXツール、教育サービス、職員向け研修などは、いきなり全庁導入するのではなく、特定部署や少人数を対象に試行導入することがあります。
初年度は小規模な実証実験を行い、効果検証後に翌年度予算を確保する流れは、新規性の高いサービスを自治体へ提案するときに有効です。ただし、実証実験後の本導入では、改めて入札やプロポーザルが必要になる可能性があります。
随意契約につなげる自治体営業の8つのステップ
ステップ1.自社サービスと関係する担当部署を特定する
同じサービスでも、自治体によって担当部署が異なる場合があります。例えば、職員向けメンタルヘルスサービスは人事課、職員課、総務課などが担当し、学校向けサービスは教育委員会の学校教育課、教育総務課、ICT担当部署などが担当する可能性があります。
代表電話でサービス名だけを伝えるのではなく、「どのような課題を解決するサービスなのか」を説明し、関係部署を確認しましょう。
ステップ2.現在の取り組みと契約状況を確認する
現在の実施内容、契約先、契約時期、契約方法、困っている点などを確認します。新規提案を急ぐよりも、現在の状況を理解することが優先です。
ステップ3.担当部署の課題をヒアリングする
自治体の課題は、ホームページや入札情報だけでは分からないことがあります。現場の運用負担、住民や職員からの要望、既存サービスへの不満、予算上の制約などを丁寧に確認します。
ステップ4.導入効果を具体化する
「便利になります」「業務を効率化できます」だけでは、庁内決裁の材料として不十分です。削減できる作業時間、対象人数、現在と導入後の業務フロー、期待できる効果、成果の測定方法まで具体化しましょう。
ステップ5.小規模導入や実証実験を提案する
全庁導入のハードルが高い場合は、対象部署や人数を限定した検証プランを提案します。初期費用、検証期間、評価項目、本導入の判断基準を明確にしておくことが重要です。
ステップ6.見積書と費用内訳を提出する
自治体が予算や契約方法を検討するためには、具体的な見積書が必要です。初期費用、月額費用、オプション、サポート費用などを分け、何にいくら必要なのかが分かるようにします。
ステップ7.庁内説明に使える資料を用意する
商談相手となる担当者が、最終決裁者とは限りません。担当者が上司、財政担当、契約担当などへ説明できるよう、導入目的、必要性、効果、費用、選定理由を簡潔に整理した資料を用意しましょう。
ステップ8.契約方法とスケジュールを確認する
担当部署に好感触を得ても、すぐに契約できるとは限りません。入札参加資格の有無、見積合わせの必要性、予算残額、決裁期間、次年度予算要求の期限などを確認し、逆算して営業活動を進めます。
自治体担当者に確認したい質問例
- 現在はどのような方法で実施されていますか。
- 現在の委託先や契約期間について、可能な範囲で教えていただけますか。
- 現在の運用で負担になっていることはありますか。
- 次回の仕様や予算の検討は、いつ頃から始まりますか。
- 現在の契約方法は、入札、プロポーザル、随意契約のどれに当たりますか。
- 新しい事業者が提案する場合、どのような登録や手続きが必要ですか。
- 対象を限定した小規模な実証実験から始めることは可能ですか。
- 見積書はいつ頃までに提出すれば、次回の予算検討に間に合いますか。
質問するときのポイント
自治体担当者は通常業務と並行して対応しています。質問を一度に詰め込まず、相手の状況に配慮しながら確認しましょう。「お忙しいところ恐れ入ります。差し支えない範囲で教えていただけますか」と前置きすることも大切です。
随意契約を目指すときの注意点
営業側から契約方法を強く指定しない
企業側から「随意契約にしてください」と強く求めることは避けましょう。契約方法を決定するのは自治体です。企業側は、サービスの必要性、専門性、独自性、価格の妥当性を整理し、判断に必要な情報を提供します。
随意契約でも比較される可能性がある
複数社から見積書を取得するケースや、類似サービスとの比較を求められるケースがあります。価格だけでなく、機能、支援体制、導入実績、セキュリティ、導入後の運用まで整理しておきましょう。
担当者の好感触だけで受注見込みを判断しない
担当者がサービスを評価していても、予算確保、上司の決裁、契約担当課の確認などが必要です。「興味を持ってもらえた段階」と「契約の条件が整った段階」を分けて管理する必要があります。
自治体ごとの契約規則を確認する
随意契約の基準や手続きは、自治体や契約内容によって異なります。提案先自治体の契約規則、入札参加資格、過去の入札・契約情報などを確認してください。
担当者が庁内説明しやすい提案資料の構成
- 自治体が抱えている課題
- サービスを導入する目的
- サービスの概要と利用方法
- 他社サービスとの違い
- 他自治体や類似団体での導入実績
- 導入によって期待できる効果
- 導入スケジュール
- 運用・サポート体制
- 見積金額と費用内訳
- 実証実験から本導入までの展開案
営業資料は、自社サービスを詳しく説明するためだけのものではありません。自治体担当者が「なぜ導入するのか」「どのような効果があるのか」「なぜこの事業者なのか」を庁内で説明するための資料として設計することが重要です。
自治体営業では契約後を見据えた設計が必要
小規模な随意契約や実証実験を獲得することが、最終ゴールではありません。実施結果を数値やアンケートで検証し、翌年度の予算化や対象拡大につなげる必要があります。
契約前の段階から、次の項目を決めておくことをおすすめします。
- 検証する課題と目標
- 効果測定に使用する指標
- 利用者アンケートの実施方法
- 実施後の報告会や成果報告書
- 本導入を判断する時期
- 翌年度予算へ反映するスケジュール
導入効果を可視化できれば、担当者が次年度予算を要求する際の根拠にもなります。
まとめ|随意契約は「選定理由を説明できる提案」が重要
随意契約は、自治体営業における有効な契約方法の一つですが、企業側が自由に選べるものではありません。
重要なのは、自治体の課題を把握し、次の3点を担当者が庁内で説明できる状態をつくることです。
- なぜ、この事業が必要なのか
- なぜ、このサービスや事業者が適しているのか
- 導入金額や契約方法は妥当か
自治体営業では、アポイント獲得だけでなく、予算時期、庁内決裁、見積提出、契約方法、導入後の効果検証まで見据えた設計が必要です。
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※本記事は自治体営業に関する一般的な情報を提供するものであり、法的な助言を目的としたものではありません。契約条件や手続きは自治体・案件によって異なるため、実際の契約にあたっては対象自治体の契約規則や担当部署の案内をご確認ください。